社会のインフラとして守りたい、動物病院の未来を創る – WithmalグループのM&A戦略

Lキャタルトン・ジャパン 投資担当者 森 胤聡 氏

Lキャタルトン・ジャパンは、LVMHグループと提携し、コンシューマー業界に強みを持つPE(プライベート・エクイティ)ファンドとして、多くの企業に投資し経営支援を行っている。投資先企業の価値向上を目指す同社は、2020年にWithmalグループとの資本提携を実現し、動物病院業界にもその知見を活かしている。今回は、Lキャタルトン・ジャパンの森胤聡氏に、同社の概要やWithmalグループとの関係、そして動物病院業界における投資の意義についてお話を伺った。

まずはじめに、森さんが所属されているLキャタルトン・ジャパンのご紹介と、Withmalグループとのご関係をお話しいただけますか?

私が所属するLキャタルトン・ジャパンは、LVMHグループと提携関係にあるコンシューマー業界に強みを有するPE(プライベート・エクイティ)ファンドです。

PEファンドの業務は、将来有望だと考える企業様に投資をさせていただき、経営にも携わりながら投資先の企業価値を高めていく、というものです。

Lキャタルトンでは、北南米・欧州・アジアを含む幅広い地域グローバルでペット関連事業に多くの投資をしており、動物病院グループの運営に関するノウハウをも蓄積してきましたされていました。この知見を日本でも活用したいと考えていたそこで日本でも動物病院グループの運営に投資をしようということになり、その中でWithmalグループとご縁があり、投資をさせていただいた、という経緯になります。

現在は、Withmalグループのパートナーとして、二人三脚でグループの発展に努めています。

Withmalグループについて教えてください。

Lキャタルトン・ジャパン(株) 森 胤聡氏
Lキャタルトン・ジャパン(株) 森 胤聡氏

Withmalグループは、Withmalホールディングス株式会社という持株会社の配下に、それぞれが動物病院を運営している「株式会社Withmal」「有限会社ヤイマル」「TYホールディングス株式会社」という3つの会社が属しているグループ会社です。
Withmalグループは、元々、動物病院様に対しWebサービスを提供する会社として現在もWithmalグループの代表を務めるの山崎智輝社長が立ち上げた会社です。

その中で2020年5月に沖縄県の「動物病院なは」を譲り受けたことをきっかけに、動物病院運営も行うようになりました。そこから年に5~10件の動物病院を譲り受けることで成長をしてきたグループです。今後も同等かそれ以上の同じようなペースで、グループの方針に賛同いただける動物病院様に参画していただき、成長をしていきたいと考えています。

現場のやり方と判断を尊重。
獣医と経営の二分化でより良い環境へ

動物病院のM&Aにおいて方針はありますか?

Withmalグループの特徴としては、グループの方針に賛同いただける動物病院様と友好的な形で承継させてもらっている点で、売主であるWithmalグループに承継された院長先生方にも基本的には一定期間残って継続勤務をしていただきもらって、一緒に働いています。

また獣医療に携わるものとしてグループ全体として倫理観を大事にしています。医療方針・治療方針に関しては、現場の院長や獣医師の判断、今までのやり方を尊重しており、原則、グループとしての運営方法を押し付けることのないようにしています。

一方で医療現場以外の、人の採用等の人事や、経理などのバックオフィス業務は、Withmalグループの本社側でお手伝いさせていただき、現場の獣医師が臨床に集中できる環境を作っていくことを大事にしています。

パルク動物病院様への当初の印象を教えてください

Copyright © パルク動物病院
Copyright © パルク動物病院

最初に思ったことは、パルク動物病院さんの情報を頂いて、長く勤続されている従業員の方が多いなという印象です。他の病院さんを見ると、数年で転職してしまう獣医師が結構多いのですが、20年近く勤務されている獣医師もいらっしゃって、人間関係が良好な病院を作り上げて来られたのだなと感じました。

また、Withmalグループとしても大事にしている「倫理観」というものをしっかり持たれている病院なのだろうという印象を受けました。例えば、パルク動物病院様が、北海道の動物病院の中で、デジタルレントゲンを1番早く導入されたそうで、そういうエピソードからも、通ってくれているペットにも獣医師にも優しい環境の病院さんだという印象でしたね。

譲受が決まった際の感想を教えてください

2023年の5月に、Withmalグループとして初めて北海道において、札幌総合動物病院という獣医師が10名ほど在籍している1.5次診療施設を譲り受けました。

札幌総合動物病院を足掛かりに、札幌市・石狩平野エリアにかけてもグループを拡大していきたいというのがグループの基本方針でした。

とはいえ、まだ北海道で1院しかない状況でしたので、次に譲り受ける病院も、ある程度の規模感を持った病院が望ましいと考えていました。しかし、北海道でのWithmalグループの知名度はまだまだ高くない。

そんな中でも、Withmalグループの方針や理念に共感をしてくださり、譲渡を決めてくれたパルク動物病院さんには非常に感謝しているとともに安心した、というのが実際のところです。

譲り受けた後に、現場と経営サイドで軋轢が生じてしまうといったトラブルを避けるために意識されていることは何ですか?

Withmalグループとして意識していることは2つあって、一つが「院長先生の引継ぎ期間を十分にとること」。状況に応じておおよそ半年から、若い院長先生であれば3~5年ほどの引継ぎ期間を設けさせていただき、バックオフィス業務は少しずつWithmalグループへ移管しつつも、診療体制は大幅に変えないよう配慮しています。

また、各エリアの動物病院さんを統括する「マネージャー制度」を取り入れています。

事業譲渡後の病院へ各マネージャーが出向き、獣医師・看護師・受付の方々と業務説明や面談をしっかりと行うことを心がけています。

マネージャーは全員が獣医師か動物看護士で臨床経験があるため、うまく現場と経営側の橋渡し役をしてくれています。

High Adoptionに対する印象を教えてください。

左:Lキャタルトン・ジャパン(株) 森 胤聡氏 / 右:(株)High Adoption 多田 舞樹
左:Lキャタルトン・ジャパン(株) 森 胤聡氏 / 右:(株)High Adoption 多田 舞樹

High Adoptionさんは元々補助金支援の事業で、多くの動物病院さんとお付き合いがあるだけあって、動物病院さんに対する知見がしっかりあり、病院さんと深い信頼関係を築かれているな、という印象でした。

北海道でWithmalグループの知名度が高くない中、初回の顔合わせから8か月でクロージングまでたどり着けたのは、パルク動物病院さんとWithmalグループの間を High Adoptionさんがうまく取り持ってくれたこと、デューデリジェンスに必要な資料の取りまとめを迅速に行ってくれたことが大きかったかなと思っています。

今後のWithmalグループの構想があれば教えてください。

動物病院というのは社会インフラとしての側面も持っていると考えています。

とはいえ、動物病院は、公共団体・公共施設ではないので、放っておくと、どんどん減っていってしまう可能性があるものであり、それをしっかり守っていこうというのが、Withmalグループの創業理念基本方針であり、今後も変わらない方針です。

特に、国内には約13,000の動物病院がありますが、その多く半数以上の病院が個人経営であり、かつ院長が高齢といった状況です。そのような後継者不在の動物病院を承継し、社会インフラとしての側面も持つ動物病院を守っていくことを、今後も続けていきたいと考えています。

また先ほどお話した通り、国内の動物病院は個人経営が多く、診察で忙しい獣医師が臨床だけでなく、人材採用・経理等のバックオフィス業務もやりながら経営する必要があります。その為、Withmalグループとして、バックオフィス業務等はお手伝いさせていただき、獣医師には、臨床に集中してもらえる環境を作っていきたいと思っています。

また、日本全国に30院というある程度の規模の動物病院グループとなってきた今、Withmalグループとして、獣医師に長く働いてもらう取り組みが必要だと考えています。その為に具体的に取り組み始めたのが、全国のWithmalグループの獣医師が定期的年に1回に集まり、意見交換や症例の共有を行う総会を実施することです。

今後は、グループ内外の専門医の眼科や皮膚科など専門性の高い獣医師の知識をグループ内で共有できる仕組みを構築しし、グループ全体での医療レベルの向上を図るような取り組みに繋げていければと考えています。

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